「住宅ローンはいくらぐらいまで借りるのが適正?」というのは、借入期間(年齢)、借りる人の年収でだいたい計算できます。
貸してもいい額の判断として、金融機関は「返済比率(返済負担率)」を用います。
返済比率は、年収に占める年間返済額の割合のことですが、貸す側(金融機関)と借りる側(あなた)によって使い方が異なります。
それぞれ説明していきますね。
金融機関が審査に用いる返済比率
まずは金融機関です。
金融機関は、実際に住宅ローンに適用されるものとは違う、「審査のための金利」を用いてあなたが借りられる上限額を計算します。
審査金利は金融機関によって異なり、だいたいは3~4%に収まっていますが、金利が低い現在は、金融機関によっては変動金利や10年固定の店頭金利などを用いる場合もあります。
実行金利は以下のように計算され、たとえば0.625%となります。
(店頭金利2.475%-金利優遇1.85%=実行金利0.625%)
ハウスメーカーやマンションデベロッパーなどは金融機関ごとの審査金利を把握しています。
金利が下がればそれだけ借りられる金額が増えるので、家の販売価格を上げたいなら、審査金利がゆるい(低い)方で計算すれば良いのです。
実際に計算してみます。
たとえばA銀行は返済比率をこのように設定しいます。
年収~300万円/返済比率25%、~400万円/30%、~600万円/35%、600万円~40%
年収800万円の場合、A銀行では返済比率は40%で計算します。
35年返済の場合、審査金利4.0%なら借入限度額は6,023万円になります。
3.5%なら6,544万円、3.0%なら6,929万円になります。
このケースなら、「収入面はまったく問題ありませんね。」ということになります。
でも、共働きで世帯年収はもう少し高い場合などを除き、年収800万円で7,000万円も借りるのはかなりの予算オーバーです。(それは借りる側の方で説明します。)
変動金利の店頭金利(2.475%)の場合も見てみます。
収入に対して借入希望額が大きい場合、そんな銀行を探してきます。
たとえば年収500万円の場合は返済比率が35%となり、審査金利3.5%、35年返済の場合、借入限度額は3,579万円になります。
2.475%で計算すると4,141万円と、500万円以上も借入限度額が上がります。
後者のケースでは世帯収入の上昇を見込んでのことかもしれませんが、収入に見合った、無理なく返済できる金額であるかどうかは疑問が残ります。
実際に借りる金利が変動金利や5年などの短期間固定の場合、金利が上がったときに返済額も上がり、返済がキビしくなるかもしれません。
「無理なく返していけるかどうか」を考えることが不可欠です。
ということで、次は借りる側の返済比率を見ていきます。
借りる側から見る返済比率
年収800万円の人が、5,000万円借りるとしましょう。
まずは金利変動がない全期間固定金利1.38%で借りた場合を見てみます。
毎月の返済額は150,170円、返済負担率は22.5%になります。
適正な範囲は20~25%で見るケースが多いので、一応は適正額に収まっているととらえます。
ただ、年収800万円なら手取りが600万円程となり、手取りに対する返済比率は30%になります。
30%のローン、負担感は結構大きいと思います。
住宅ローンのほかにも住居費(固定資産税や管理費・修繕積立金・駐車場など)がかかることも考慮する必要があります。
昇給や配偶者の収入を考慮していませんが、当面世帯収入のUPが期待できない場合、頭金を多めに入れて借入額を下げるか、物件価格そのものを見直すことも考えられますね。変動や10年固定などの低い金利とミックスしたりして、トータルで返済負担を下げることも検討の価値があります。
ミックスについてはこちらをどうぞ。
ミックスローンについて。お得な住宅ローンの借り方
参考に、実際に借りている人たちはどの程度借りているのか?がこちらです。
国交省と住宅金融支援機構が発表しているデータです。
国交省のデータでは借入額が少なく、変動金利なども含まれるため、返済比率は20%弱。
一方で住宅金融支援機構の方は、国交省のデータに比較して高めになっています。
返済比率は家計の返済余力を見る一つの尺度で、万能ではありません。
大切なのは「いくら借りられるか」ではなく、「ライフプランを踏まえて無理のないローンを組む」ことです。
将来の出費に備えてゆとりを持ったローンを組み、余裕ができたら繰り上げ返済を活用し、定年までに完済する返済計画を考えてほしいと思います。
住宅の適正予算、概算についてはこちらもどうぞ。
適正な住宅ローン金額の目安を知る
住宅ローン適正額がいくらまでなのか簡単に計算する方法
コメント