住宅購入を考えたとき、「家賃と同じローン返済額」だから大丈夫という話、良く聞きます。

営業マンからすると使いやすいので、常套句になっています。
買う方も「家賃を払い続けても家は手に入らず、もったいない」という気持ちがあるからこそ効果があります。

一生賃貸でいると将来の年金暮らしで家賃を払い続けなければならないし、不安です。
それに、老後は部屋を貸してくれないケースもあるだろうとも考える訳ですね。
だったら家は資産になるし、いずれ買うなら早い内の方が良いのではという発想です。

では、ということで家賃とローンの比較だけで購入を検討するのは拙速です。
家の資産性、ライフプラン、買った後の家計など、色々考えることがあります。

買った後もゆとりを持って返済ができるよう、家賃以外のこともしっかりと考えたいところです。
考えることは色々ありますが、ここでは住宅ローンの借り方について考えてみましょう。

本当に返せるかどうかは家賃とローンの単なる比較では決まりません。
賃貸なら家計の状況が変われば引っ越すことで家賃を下げられますが、ローンは借りたら必ず返さなければならないので、慎重に考える必要があるのです。

住宅ローンは、3つの要素から成り立っています。
借入額、金利、返済期間です。

5,000万円を借りた場合を例に、順番に見ていきましょう。

低金利で、しかも住宅ローン控除があるので、どのぐらい頭金を入れるのか悩みます。
手持ちのお金がないため、諸費用も含めて借りる場合もあるでしょうね。

金利が低かろうが高かろうが、変わらないことがあります。
それは、金利上昇リスクを考えるべき、ということです。
たくさん借りれば当然利息が増えますから、借りた後の返済計画が不可欠です。
買った後でも貯金が何千万も残る人や、世帯年収が高いなど、資金に余裕がある人は別ですが、そうでない場合は、変動金利や10年固定などで借りているのに「今の家賃と比較するだけ」なんてもってのほかですから、必ず金利上昇も試算すべきです。

では試算してみます。

まずは借入額
5,000万円を全期間固定1.2%、35年、元利均等、ボーナス返済なしで借り、繰り上げ返済をしない場合、総返済額は6,126万円。

頭金を少し入れ、4,900万円とした場合は6,003万円。
100万円の借入減で金利負担は23万円(6,126-6,003-100)減ります。

借入は少ないに越したことはありませんが、手元にも現金を残さなければなりませんので、そのバランスを考える必要があります。

だから繰り上げ返済でコントロールするのです。
5,000万円を借り、住宅ローン控除が終わる10年後に100万円繰り上げ返済をすると、34万円分の金利負担が減ります。
10年間手元に100万円を置いておくためのコストが23万円と考え、資産に余裕ができたら繰り上げ返済をして、35年間で利息負担を下げるのです。
この「家計の状況に合わせて返済をコントロールできる」というところが大きなメリットですから、返済計画がとても重要な訳ですね。

では次に金利です。
1.1%で、他は同条件の場合を見てみましょう。
総返済額は6,026万円と、0.1%の金利差で100万円も金利負担が減りました。

ではこれが0.6%の変動金利ならばどうでしょうか。
金利が変わらなければ総返済額は5,545万円となり、1.2%と比べて581万円(6,126-5,545)も金利負担が減ります。ただ、変動金利は金利上昇リスクが大きいですから、1~1.5%程度上昇した場合も見ておくべきです。

たとえば5年後に0.5%上昇し、10年後に0.5%上昇し、その変わらずの場合はどうでしょうか。
総返済額は6,267万円となり、固定金利の方が141万円(6,126-6,267)も金利負担が少なかったということになります。
この程度の金利上昇は十分あり得ますので、これも踏まえて金利を選ぶべきです。

金利負担を抑えつつ、金利上昇リスクを抑えたい場合は2本のローンをミックスする、という方法もあります。
例えば半分の2,500万円を変動、もう半分を全期間固定なら、総返済額は5,835万円となり、金利負担は291万円(6,126-5,835)も少なくなります。(変動金利が変わらない場合)
繰り上げ返済をするときは、変動金利が大きく上がってきたら変動を返し、そうでなければ固定の方を返していくことでコントロールすることができます。

次は借入期間です。
期間だけ34年にしてみましょう。
総返済額は6,092万円となり、金利負担は34万円(6,126-6,092)減ります。
その代わり毎月の返済額は3,454円(149,305-145,851)増えます。

これが5年ならどうでしょうか。
総返済額は5,956万円となり、金利負担は170万円(6,126-5,956)減りますが、毎月の返済額は19,603円(165,454-145,851)増えます。
家計に余裕があれば良いですが、そうでなければ長めに借りる方が、繰り上げ返済でのコントロールに余裕が埋まれます。
こちらも家計とのバランスを見て選択をすることが必要になってきます。

では最後に元利均等ではなく、元金均等にしてみたらどうでしょうか。
総返済額は6,053万円となり、金利負担は73万円(6,126-6,053)少なくなります。

ただし、元金均等は最初の返済額が169,048万円となり、23,197万円(169,048-145,851)も負担が大きくなります。
毎月の返済額が元利均等と同等になるのは、繰り上げ返済をしなければ17年目です。
金利負担は大きく減りますが、元利均等を選ぶ場合は手元の資産や世帯収入、働き方、子どもの教育費など、トータルに考えて選択をすべきです。

このように、住宅ローンは借りる前に色々と試算し、借りた後も計画的に返済を進めていくことが必要になってきます。
マンションデベロッパーやハウスメーカーは多くの銀行と提携しているため、営業マンがすべてやってくれますが、上記に述べたような細かな試算はまずやってくれません。

彼らのインセンティブは「借りられる上限で借りてほしい=高い家を買って欲しい」ということなので、無理はありません。
銀行も同じく、こんな面倒なことはいちいち計算してくれませんので、自分で考えるしかないのです。

5,000万円も借金をするのはあなたですから、これぐらいの手間は惜しんでほしくないと思います。