平成26年4月から住宅ローン控除が拡大されました。適用されるローン残高の上限は一般住宅で4,000万円、長期優良住宅・低炭素住宅で5,000万円です。それぞれ毎年ローン残高の1%を10年間、最大で400万円または500万円の控除を受けられます。

購入後は繰上返済が総返済額の縮小、返済期間の短縮に効果があることもよく知られています。その一方で、購入後10年以内に繰上返済した場合、せっかくの住宅ローン控除額が少なくなってもったいない、と思っている方もいると思います。

そこで、住宅ローン控除を受けた場合の繰上返済についてシミュレーションしてみたいと思います。

繰上返済には期間短縮型と返済額軽減型の2種類ありますが、利息軽減効果の高い期間短縮型を使って試算していきます。
期間短縮型の繰上返済は、ローン残高が多いうちにする方が効果があります。つまり早ければ早い程、利息軽減効果が大きくなります。無理のない程度で実行した場合の効果を比較してみます。

●家族構成と前提条件
購入時の年齢: 夫37歳、妻32歳、子ども1人(2歳)
年収: 夫500万円、妻200万円、10年間で世帯年収120万円アップ
貯蓄: 900万円
教育: 私立幼稚園、小学校から高校まで公立、大学私立文系
住宅: 物件価格4,300万円(頭金600万円、借入額3,700万円)+諸費用200万円
住宅ローン: 全期間固定金利2.25%、35年返済(ボーナス返済なし)
※現行の住宅ローン減税は平成29年12月までですが、以降も同額が続く前提とします。

●繰上返済がない場合
住宅ローン減税効果(10年間):303万円

●3年目に200万円繰上返済した場合
住宅ローン減税効果(10年間):292万円
利息軽減効果-207.2万円

●住宅ローン減税終了後の11年目に200万円繰上返済した場合
住宅ローン減税効果(10年間):303万円
利息軽減効果-141.7万円

住宅ローン控除の減税効果の減少:303万円-292万円=+11万円(税金支払の増加)
利息軽減効果-207.2万円-(-141.7万円)=-65.5万円(利息の支払減少)
差額:11万円-65.5万円=-54.5万円

借りてから3年目という早期の実施も効いていますが、繰上返済によってローン残高が200万円減少し、減税額が縮小することよりも繰上返済による利息軽減効果の方が大きいという結果です。

全期間固定金利の場合、金利が高いのでこういう結果になります。つまり全期間固定金利で借りるなら、ローン減税を気にせずに繰り上げ返済を実行した方が得になります。ただし得といっても35年間で54.5万円ということは年1.5万円程度になるので、無理して繰り上げ返済する必要はありません。

では変動金利の場合はどうなるでしょうか。
●繰上返済がない場合
住宅ローン減税効果(10年間):278万円

●3年目に200万円繰上返済した場合
住宅ローン減税効果(10年間):270万円
利息軽減効果-56.1万円

●住宅ローン減税終了後の11年目に200万円繰上返済した場合
住宅ローン減税効果(10年間):278万円
利息軽減効果-40.8万円

住宅ローン控除の減税効果の減少:278万円-270万円=+8万円(税金支払の増加)
利息軽減効果-56.1万円-(-40.8万円)=-15.3万円(利息の支払減少)
差額:8万円-15.3万円=-7.3万円

35年間、金利が変わらないという前提になってはしまいますが、年間2,000円程度の効果です。つまりローン控除期間は繰り上げ返済で手元の現金を減らすことをせずに、必要なことにお金をまわすことの方がよっぽど良いということになります。ただし、金利上昇に備えて手元にキャッシュを置いておくということが大前提ですよ。

では次に、手元の現金を活用するには別の方法を見てみます。
3年目に繰上返済に使用した200万円を32年間運用した場合を見てみます。繰上返済による利息軽減額は、返済原資を残りの期間運用した場合に得られる運用益と同じことだからです。つまり32年間で200万円が458.9万円(繰上返済分200万円+利息軽減分207.2万円÷0.8(税引後))を超えれば良いわけですが、計算結果は年率2.63%での運用ということになりました。

現在の低金利でこれだけの利回りを得ようとすると、当然定期預金や貯蓄型の保険では難しいため相応のリスクをとることが必要になります。変動金利や固定金利期間選択型で借りた場合は金利上昇リスクがあるので、低金利のメリットを受けているうちに運用をするという選択肢もあり得ます。しかし、運用する場合はリターンにリスクは付き物ですから、無リスク(返すだけ)で利息削減できる繰上返済とは異なるので、そこは注意が必要です。

固定と変動どちらで借りた場合も、早い時期の繰上返済は残りの長い期間運用できるチャンスと引き換えであるということに変わりはありません。もちろん人生と同じで、この場合もチャンスにリスクは付き物、ということになります。